2023.11.08
今日は私の専門分野の歯周病菌について書きたいと思います。
私は、大学卒業後、大阪歯科大学の大学院で歯周病を専攻していました。
当時、歯周病治療と言えば歯垢や歯石を徹底的に取り除き、それでも取り除けない場合は歯肉を切開して歯周ポケットの奥にある歯石や炎症物質などを取り除く手術(オペ)が盛んにおこなわれていました。
私は歯周病専門医を目指していましたので、資格取得の要件である手術を数多くこなしていました。その中で手術をすると一旦良くなるもののまた再発する患者様多くいました。そこで歯周病の本当の原因である歯周病菌について深く研究をしたいと思い、歯周病科から細菌学教室に出向していました。
歯周病菌はおよそ800から900種類ありますが、なかでも特に悪い菌が3種類あり、それをレッドコンプレックスと言います。レッドコンプレックスには、①PG菌 ②TD菌 ③TF菌の3菌種がいます。私は特にPG菌(ピージー菌/ポルフィロモナス・ジンジバレス)を中心に研究をしていました。
歯垢を少量採取し、顕微鏡で見てみましょう。(※動画の無断転用厳禁)
PG菌は画像だけでは確定できませんが、小さいウインナーのような形で素早く動いているものがPG菌と思われます。
くるくると螺旋を描いて動いているのは特徴がありTD菌と確定できます。
真ん中の右寄りにある黒い丸の虫のように見えるのはトリコモナスという原虫で細菌でもウイルスでもありません。重度の歯周病の方によく見られます。画像で確認できるTD菌がいるとPG菌も高確率で検出されます。
当院では、初診時すべての患者様に歯垢を採取し顕微鏡で確認することを無料で行っています。また、オルコアという機械で簡易的な遺伝子検査(PCR法)で、PG菌の感染度合いの確認もできます(2,500円)。感染の度合いが重度の場合で、必要があり患者様が希望する場合には専門の検査機関に出し、レッドコンプレックス3菌種を含めた5菌種についてさらに詳しく調べてるなど、原因菌や状態を見極め治療計画に役立てています。
これらの菌がいると骨を溶かし、歯が抜けるなどの悪さもしますが、独特の臭いも発するので、口臭が気になることもあるでしょう。
ですが、それよりも怖いのは、歯石取りはもちろん歯磨きをしたときにも歯周ポケット内や出血部位から体内(血管内)に入ってしまうことです。
菌は血流にのって全身に巡ってしまい、血栓をつくったり、心臓病や脳疾患、糖尿病のリスクを高める(菌血症)ことがわかっています。
このようなことから、私は当医院で行われている歯石取りには菌血症を起こさないように細心の注意を払っています。
毎日歯磨きする際に出血が見られる方は、すぐ止まるからと安易に考えず全身の健康のためにも適切な治療を受けることが大切です。
次の回では治療法についてお話ししたいと思います。